おなまえ Eメール タイトル メッセージ > 日本 東京某所 > > 白と銀で統一された清潔な廊下を複数人の男女が歩いている > 白衣を着た研究者風の男が数人、体つきの良い長身の男が一人、そして明るく見積もっても高校生程度にしか見えない少女――否、女性が一人 > > 「―――で、状況は?」 > 「ネガティブ、としか言えないな」 > > 男――成城院 梓が放った問いに隣を歩く小柄な女性――クリシュア・H・アーダインは見た目に似合わぬ大人びた口調で答える > > 「取り敢えず周囲100mの地域を全面封鎖した上で捜査を行っている」 > 「…第二次大戦中の不発弾が見つかった、だったか」 > 「ああ、一応自衛隊にも出張ってもらっているし、警察は言わずもがなだ」 > 「相変わらずだな、特関は」 > 「一番おっかない時期は当に過ぎた…けど、脅威が完全に消え去ったわけじゃないからな > 備え有らば何とやら、だ」 > > 二人が彼女の私室――所長室の前に辿り着くと、クリシュアは研究員に『部屋には入るな』とアイコンタクトを送ると、梓と共に部屋に入る > > 「なる程…な、…で?」 > 「そう急(せ)くな……えーと、調査班によれば、ゲートが開いた痕跡があり、一時的に『あちら側』と世界が繋がったようだ」 > 「…」 > > 部屋の中央にある机に資料を出し、梓に見るよう促す > 梓は紙束を受け取ると、それをパラパラと捲りつつクリシュアの言葉に耳を傾けた > > 「原因は不明、監視カメラがあるような場所でもなし…突っ込んできたトラックに車載カメラが合ったわけでもなし > つまり、映像証拠は一切無しって訳だ」 > 「…つまり現段階で明日香を見つける方法は」 > > ゼロ > と、言いかけた梓の言葉を遮る様にアーダインは言う > > 「―――ゼロ、ではない」 > 「本当か!?」 > 「だが、高くも無い」 > 「…何でも良い、方法があるんなら教えろ」 > 「……危険だ、成功する可能性は殆ど無い」 > 「でも…っ!」 > 「そうやってお前が助けに行って!仮に帰ってこれなくなったとしたら!渚さんはどうする!?」 > 「!!」 > 「娘さん、明日香ちゃんが行方不明で現時点で助かる可能性はほぼ0パーセント!その上お前まで居なくなってみろ!」 > 「……くっ」 > 「言い過ぎではない!死ぬぞ!」 > > ――一生心に消えない傷を負わせ、それに耐え切れず死ぬかもしれない > > 最悪のビジョンだった > > 「…だったら、どうしろって言うんだ! > このまま帰ってこないかもしれない娘を待ち続けろって言うのか!?」 > 「それは―――」 > > 梓はクリシュアの肩をつかんでまくし立てる > > 「………私だって――」 > 「…………悪い、八つ当たりだったな」 > > クリシュアは言葉を最後まで紡ぐことなく俯いた > 梓も怒り・不満・悲しみ・それぞれが複雑に絡み合った感情を何処へやったものかと、顔を両手で覆い、椅子に深く座り込んだ > > > そこへ > > > 「特関第17地下機密倉庫、登録番号1382号『東亜重工・N.W.C製次元転移装置』」 > > 「「――」」 > > 突如開かれたドアの向こうから凛とした男の声がした > > 「時代遅れの部品やらなんやらが詰まった欠陥品だが…ここのスタッフや私に掛かれば、使えんことも無いがね?」 > 「全く、そんなに諦めがいい奴だとは思わなかったぜぇ?梓」 > 「お前…ラルフも!」 > 「結城…どうして」 > > 特関の変態コンビこと、Dr.ラルフとクリシュアの夫である藤堂結城だった > > 「どうしても何も、可能性が少しであるならば食いつくのが研究者の性という奴でね、既に理論だけならばあちらに人員を転送可能だ > 後は装置に改造を施すだけ…」 > 「って言うわけだ」 > 「…クリシュア」 > 「あー、もう分かったよ…勝手にしろ > でも、渚さんにはなんて言うつもりだ?黙っていくなんて言ったらケシズミにするぞ」 > 「…勿論『私(達)をおいて行くなんて無いわよね?』…渚!?」 > > 結城やラルフの後ろから出てきた人物…それは梓の妻である渚と、彼の姉である司だった > > 「行きましょうよ、異世界 > 一度世界を救ってんだから、娘一人連れて帰るくらいお茶の子歳々でしょ?」 > 「場所は分かってる、行く方法もある、そこに可能性がある、それだけで理由なんて十分… > 行きましょう梓、明日香を連れて帰る為に」 > > 司に続いて渚が梓に救出へ行くことを促す > > 「私は目の前に可能性があるのに縋らないなんて嫌、それが娘の安否に繋がるなら尚更 > …それにあなただけ行かせるなんてさせない、待つだけなんて嫌だし、そんなのは性に合わないの」 > 「最悪、帰れなくてもそこに住んじまえば良いだけの話だろ?」 > 「…そういう問題か?」 > 「住めば都って奴? > 家族が居て、友達が居れば文句無いだろ」 > > 彼らの、妻の言葉を聞いて梓は一瞬考えるような仕草をすると、意を決して言った > > 「…行こう、明日香の下へ!」 > 「そうと決まれば話は早い、早急に私は作業に取り掛かるとしよう」 > 「装備ってどうするんだ?」 > 「この面子で行くとすれば…フル装備の状態で最大でも装甲車一台程度が限界だろう」 > 「だったらそれで行こう」 > 「んじゃ、私は装備の手配をしておこう > 司さん、渚さん、武器の経験は?」 > 「え?私は大丈夫よ、ランボーとタイマンして勝つ自信があるわ」 > 「司さんは本当に殺りそうで怖いわ…で、渚さんは?」 > 「えーと…拳銃くらいなら」 > 「…だったら寧ろラルフと一緒にバックヤードで医療スタッフでもやってくれたほうが良いな」 > 「それじゃ、俺は由紀を呼んでくる > 明日香ちゃんの事心配してたし、二つ返事で来てくれるだろ」 > > > > ―――残された者達は、一筋の希望を見出して進む > > その先に、想像を絶する困難があるとも知らずに――― > 参照先 削除キー (英数字で8文字以内) クッキー情報保存
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