+ 第6話 +
真夜中はエッチな時間

その日は、とても静かな夜でした。
一日を終えたココナは、「ご主人さま」のルティにおやすみなさいの挨拶をして、自分の部屋のベッドにもぐりこみました。
忙しかったおかげか、とても疲れていて、すぐにぐっすりと眠りの中に落ちていきました。

 ココナの部屋は、自分で買い集めたぬいぐるみや、色々なところから摘んできた花を飾ったかびんなどでいっぱいの、子供っぽい部屋…もとい、かわいらしい部屋でした。
 もちろん、そのぐらいは、どこにでもありそうな普通の部屋なのですが。
 薄闇にまぎれて動くぬいぐるみがいる部屋、というのは、ちょっと異質でした。
 もちろん、普段は動かないぬいぐるみのはずなのですが…

 数匹の小さなぬいぐるみたちは、コミカルな動きをしながら、ココナの眠るベッドまでやってくると、協力してベッドの上に登りはじめました。
 全員が登り終わると、今度は、ココナの掛け布団をめくり上げてしまいました。
 パジャマを着込んだココナの全身がさらけだされます。
 ぬいぐるみたちは、無防備に眠るココナをしばらく眺めると、奇妙な行動を始めました。
 あるぬいぐるみは、ココナの髪の毛をくいくいとひっぱってみたり、あるぬいぐるみは、少しゆるんでいる胸元からパジャマの中にもぐりこんでみたり、他のぬいぐるみは、協力してココナのズボンやパンツを脱がそうとしたり。
 寝ているココナで、好き放題に遊んでいます。
「うにぅ…んん…」
 でも、よっぽど深い眠りに入っているのか、ココナが目を覚ます様子はまだないようです。
 しかし、眠ったままなにか違和感を感じているのか、ココナは寝返りをうちました。
 むぎゅ。
 そのおかげで、パンツを脱がそうとしていた縫いぐるみの何匹かは、ココナのふとももに挟まれてしまいました。
 ぬいぐるみはじたばたと、ふとももの間から抜け出ようとしますが、なかなか抜けられません。

 その頃、パジャマの中にもぐりこんだぬいぐるみは、はずみでぷにゅっとココナの胸に触ってしまいました。
 柔らかな弾力に何を思ったか、今度は故意に、胸の…そのつぶらな先端を何度か押します。
「にゅぅ……ん…」
 しかしその時、ココナはまた寝返りをうって、今度はうつぶせになりました。
 そのため、胸のところにいたぬいぐるみは、胸に押しつぶされてしまいました。
 じたばたしても、小さなぬいぐるみには、小柄なココナの体重でさえ重すぎるので、なかなか抜けられません。
 しかしそのおかげで、足の付け根にいた縫いぐるみはなんとか抜けだせました。
 ぬいぐるみはさっきの続きをと、またパンツを脱がそうとしましたが、今度はココナが足を大きく開いてるのでうまく脱がせる事が出来なさそうでした。
 あるぬいぐるみは、少し考えてから、パンツの中にもぐりこみました。
 そして、パンツをぐいぐい押し上げながら、ココナのお尻をゆっくりと降りていきます。
 そうやって下までたどり着くと、ぬいぐるみはパンツを脱がすことを忘れて、目の前にあった割れ目を不思議そうになでさすりはじめました。
 もちろん。
 パンツの中にある割れ目、といえば、ココナの大事な場所に他なりませんでした。
「ふにゅ…っ、ん…」
 ぬいぐるみが割れ目をなでさすり続けていると、ココナは眠ったまま感じはじめたのか、寝息に少し切ないものが混じってきました。


 …小さなぬいぐるみたちがココナにエッチな悪戯をして遊んでいるのを見て、部屋のすみに置かれていた大きなクマのぬいぐるみが、むくりと動き出しました。
 クマのぬいぐるみは、ゆっくりとベッドのそばまで来ると、ココナを目覚めさせないようにそっと抱き起こして、胸の下でつぶれていたぬいぐるみを助けてあげました。
 そして、ココナのズボンとパンツを脱がせ、服を胸の上までまくり上げると、背後から抱くようにして座り、小ぶりなココナの胸をさわりはじめました。
 小さなぬいぐるみたちは、みんなで、露出したココナの下半身に群がりはじめました。
 それでもまだ、ココナはまだ目を覚ましません。


 クマのぬいぐるみは、触るだけでは飽き足らず、ココナの胸を揉みはじめました。
 小ぶりな胸ですが、むにゅむにゅと揉んでやれば、柔らかい弾力が手の先に感じられます。
 一方、下半身…というよりもむしろ、ココナの大事な場所の周りに群がった小さなぬいぐるみたちは、みんなでココナのいたいけな割れ目をぷにゅぷにゅとつついたり、くいくいと拡げてみたりして遊んでいます。
 そのうち、割れ目からエッチな液があふれはじめると、ぬいぐるみたちは面白がって、さらにココナの割れ目に悪戯をします。
 しばらくすると、悪戯するたびに、少し水っぽい音が混じり始めました。
「ぅにゅ…ん……っ、ふぁ…んん……」
 …それが示すとおり、ココナの寝息はいつの間にか、完全に切ない吐息に変わっていました。

 しかし、しばらくして、ぬいぐるみのひとつがココナのしっぽに触れた途端、ココナはぱちっと目を開きました。
「うにゅ…?」
 はっきりしない意識のまま、微妙な違和感を覚え、きょろきょろとあたりを見回します。
 そしてふと下のほうを見ると、自分の大事な割れ目を、むにゅっと押しひらいたまま硬直しているぬいぐるみと目が合いました。
 じ〜〜〜〜〜〜っ。
 ぬいぐるみは冷や汗を流して、動かないただのぬいぐるみのふりをつづけています。
 しかし、意識が少しずつはっきりしてくると、ココナははっと正気に戻り、自分の状況を認識して、
「…きゃぁぁんっっ!!」
 思わず大きな悲鳴を上げてしまいました。
 同時に大きなクマのぬいぐるみは、ココナの胸から手を離して手をぶらんとさせ、割れ目を押し広げていた小さなぬいぐるみは、こてんと倒れ、ただのぬいぐるみのふりをしました。
 そうして自由になったココナは、慌ててぬいぐるみから離れ、ベッドの上に戻りました。

 その時…
「どうしたの? 恐い夢でも見たの?」
 悲鳴を聞いたのか、隣の部屋で寝ていたルティが心配して来てくれました。
「うにぅぅっ、ぬいぐるみが、ぬいぐるみが襲ってきたです〜!
 いっぱい、みんなで、わたしにえっちなことしてきたんです〜〜〜」
 ベッドのそばまでやってきたルティに、ココナは泣くように抱きついて、今、自分の身に起こっていたことを説明しました。
「…ぬいぐるみが? そんなわけないよ。寝ぼけてる?」
「違うです〜、ほんとです〜〜〜っ」
「でも、だったら……その…なんで下半身裸なの?」
「うにぅ…それは…」
 起きた時にはすでに脱がされてたので、わかるわけがありません。むしろ、こっちが聞きたいくらいでした。
 ココナが返答に詰まっていると、ルティは、ココナの頭を優しくなでてあげました。
 まるで、幼い妹でもあやすような感じです。
「寝ぼけてたか、悪い夢でも見たんだよ、きっと。
 さ、ちゃんと下履いて、寝よ?」
 ルティは微笑を浮かべて、そう言いました。
 その時ふと、窓際に置かれている花瓶の花に目が止まりました。
 確か、何日か前に見たときはなかった花です。
「この花…どうしたの?」
「この前、マトリの森に遊びに行った時に、綺麗だったから摘んできたです…」
 花の香りが、かすかに部屋中に広がっています。
 不思議と甘くて、心地よい香りです。
「そっか…ほんと、綺麗な花だね。いい香りがする」
 そしてルティは、しばらくの間、ココナのそばについていてあげました。


「…それじゃ、もう大丈夫だから、さあ、おやすみなさい」
 ルティはココナにふとんをかけなおすと、部屋から出ていってしまいました。
「うにぅ……」
 結局「ご主人さま」に最後まで信じてもらえなくて、しょんぼりとしながら目を閉じると、布団の上にぽてんと何かが乗っかりました。
「うに…?」
 目線をそっちに持っていくと、そこにいたのはピンク色のウサギのぬいぐるみでした。ウサギのぬいぐるみはぴょこぴょこと跳ねて、ココナの顔のほうに近付いてきます。
 そして、もう一度悲鳴をあげそうになったココナの口に、むぎゅっと飛び込みました。
「むむぐ‥‥むんん」
 口を塞がれて声が出せません。取り出そうとした手は、クマのぬいぐるみに押さえられてしまいました。
 そして、他のぬいぐるみたちもまた、協力してかけ布団をどかせると、ココナのパンツを、パジャマのズボンごと脱がせていきました。
「んんー、む〜〜」
 押さえつけられていて抵抗も出来ないし、悲鳴を上げてもくぐもった音にしかならず助けも呼べないので、あっさりと、いたいけな割れ目が再びあらわにされます。
 そこはまだ、さっきのこともあって、ほんのりと濡れていました。
 …前戯を終えて、準備の出来たその場所にする最後の悪戯といえば、もう、あれしかありません。
 いくらエッチに疎いココナでも、それくらいはわかります。
 でも、ココナにはまだ、男性経験というのがありません。それを思うと、ココナは急に怖くなって、泣きそうになりました。
 一方のぬいぐるみたちは、お互いに顔を見合わせました。
 誰が、最初にそれをするのか?
 できれば自分が…
 ……。

 ぬいぐるみたちは、ココナに最後の悪戯をする順番をめぐって争いはじめました。
 しかし、小さなぬいぐるみたちが、大きなクマのぬいぐるみに勝てるはずはありません。
 小さなぬいぐるみたちは1匹2匹と、ベッドから投げ落とされていきます。
 最後の1匹を投げ飛ばしたクマのぬいぐるみは、ベッドの下に転がっている小さなぬいぐるみたちに「どうだ」と威張ってみせて、やる気まんまんでココナのほうを振り返りました。
 しかし、ベッドの上にココナの姿はありません。
 みんながけんかしたおかげで、拘束が解けてしまったのです。
 クマのぬいぐるみは、哀愁さえ漂わせながら、そのままのポーズでしばらく硬直していました。


「はうぅぅ…た、助かったです〜…」
 廊下で、ココナはつぶやくように言って、安堵のため息をつきました。
 ところが、下半身には何にも履いてませんでした。逃げるのに必死で、履くのを忘れてきたようです。
 履くものを取るのに元の部屋に戻るのは怖くて嫌だったのですが、他のみんなのところに行くのも起こすようで悪いし、下半身丸出しのこんな格好なので気が引けます。
(…そうだ)
 ココナはふと思い立って、1階の洗濯室に行ってみることにしました。
「よかった〜。まだ洗濯されてなかったです」
 かごに入れられたままの洗濯物から自分のズボンとパンツを取り出して履くと、リビングのソファで眠ることにしました。
 ここにはぬいぐるみは置いていないので、安心です。
 ブランケットを引っ張り出して、少し広めのソファに身をゆだねると、さっきのことを忘れて、またすぐに眠りに落ちていきました。


 その頃、ぬいぐるみたちはココナを探して部屋を抜け出していました。
 さっきはけんかして逃げられてしまったので、今度はみんなで一緒に…
 鍵のかかっていなかった2つ隣の部屋の扉を開けて、そこで気持ちよさそうに寝ている女の子を、ぬいぐるみたちは見つけました。

 しかしあいにく、ぬいぐるみたちは固体の識別能力に欠けていたのです。
「ふにゃぁぁぁ〜〜〜っ!?」
 しばらくして、ミリルの悲鳴があがりましたが、もうココナはぐっすり眠っていて気がつきませんでした。


 …あとからわかった話なのですが。
 ぬいぐるみたちが動き出した原因は、ココナの摘んできた、マトリの森の魔法の花にあったようです。
 森の知識人シャルロット曰く、花の花粉が、ぬいぐるみたちに一度だけ意思を与えたということらしいのですが…
 でもなぜ、ココナにエッチなことをしたのでしょう。
「さあ…? もしかして、いつもココナたんの着替えとか見てて、興奮してたんじゃない?」

 …シャルロットの冗談に、今度から新しいぬいぐるみは違う部屋に置こうと、そう決意するココナなのでした。

おしまい。


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