「ミリルさんっ、ミウさんからお手紙ですっ」
郵便受けにたった今配達されたばかりの手紙を持って、ミリルの部屋に入ってきたのは、ココナでした。
ココナは笑顔でしっぽを振りつつ、ミリルにそれを手渡します。
犬の耳としっぽを持った亜人種だけに、犬らしい仕草が、しっくりと似合っていました。
「ありがと、ココナちゃん。
それにしても、ミウちゃんの手紙かぁ…開けたらいきなり触手がどばーっ、なんて事は…
…ないよね、さすがに」
と言いつつも、天に透かしてみたりして、中身の安全を確かめるミリル。
趣味の錬金術を失敗させ、エッチな混乱を招くのは、ミウの得意技です。
「うに〜…いくらなんでもそれは無理だと思うです…」
「…だよね。じゃ、開けてみるかな」
思い切って、ミリルはその手紙を開けました。
手紙には、予告状…もとい、「みんなで遊びに行くよ」という趣旨の内容が書かれていました。
…そしてこれが、ミリルに降りかかるエッチな災難の始まりだったのです。
数日後。
ミリルが街中を歩いていると、買い物袋を抱えたルティを見かけました。
ルティは、ミリルやその双子の妹のシリル、自称使用人のココナが居候している家の主で、亜人種の3人とは違い、普通の人間です。あるじ、とはいえ、ミリルとは同い年なのですが。
「買い物終わった?」
「うん。なんとか。
そゆことであたし先に帰ってるから、ミリルちゃんはミウちゃんたちの案内よろしくね」
「うん、りょーかい」
…とはいえ。
ルティが去った後で思い出したのですが、考えてみれば、ミウたちがどういう手段でやってくるのか、手紙には書いてありませんでした。
「どこで待ってればいいんだろう…?」
と、その時、にわかに街の空気がざわめきました。
空を見上げると、小さな影。それがゆっくり、こちらに向かって下降しているのです。
よく見れば、空を飛ぶモンスター。
…なんとなくいやな予感がしたミリルは、こそこそと逃げ始めました。
しかし、それを目ざとく見つけたモンスターは、ミリルの行く手に着地しました。
「あぅ…やっぱり…」
…それは、このあたりで見かけないタイプの触手モンスターでした。
でも、ミリルには見覚えがありました。それもそのはず、それは、マトリの森にだけ住むタイプの触手モンスターだったのです。
もちろん、そこに乗っているのは…
「ミリルたん、おはよ〜」
うさみみの妖精ミウ、ねこみみの妖精シア、いぬみみの妖精シャルロット、音楽の妖精フィリス。
マトリの森の妖精たちでした。
ミウが魔法を唱えると、妖精たちは小さな姿から人間と同じ大きさに変わりました。
「…逃げられたら、私たちがミリルの家にいけなくなるところだったではないか」
「あ、いや、つい条件反射で…」
「でも、逃げるならもっとうまくにげないと、ボクには勝てないよ〜?」
「そう言われても…」
「あの…ここまで飛んできてモンスターさんも疲れてるみたいですから、立ち話よりも先に、お家のほうに案内してもらえませんか?」
シアの一言に、ふっと触手モンスターの方を見ると、もはや動くのもやっとな感じのモンスターが、涙目でお願いしていました。
もちろん疲れている理由は、ここまで飛んでくるために消費したMPの不足に他ならないのですが。
「…そうだね。それじゃあ、こっち」
こんなところでMPを取られ(=エッチなことをされ)るのも嫌なので、ひとまずミリルは家に向かって歩き出しました。
ミリルたちが住んでいる家は、4人住まいとは思えないほど広い、3階建ての家でした。
「ここだよ。みんな多分待ってるから、どうぞ」
ミリルが玄関のドアを開けると、触手モンスターは触手をミリルに伸ばしました。
「って、ふにゃ〜〜っ!?」
「どうぞ、なんて言うから勘違いしたんだろう」
「ちょっと待ってよっ、そんな無茶な理屈っ」
ミリルは全員を無理やり玄関の中に押し込むと、玄関のドアを閉めました。
それと同時に、ミリルは身動きできないように触手に絡め取られてしまいました。そしてすぐに、服やスカートの中に、触手がもぐりこみはじめます。
そんなこんなで、ぎゃあぎゃあとミリルが騒いでいると、奥からルティが出てきました。
「もう…なんだか玄関が騒がしいと思ったら…みんな来てたんだ。
ようこそみんな、いらっしゃい」
「はーい。おじゃましま〜す」
ミウとシャルロット、フィリスはルティの案内に従って、リビングの方に行ってしまいました。
「あ、あの…ミリルさんは……?」
「んー…とりあえず、モンスターが満足しないとダメなんだよね? だったら、もうちょっと我慢してもらうしか…」
「それはないよ、ルティちゃん〜〜っ! ふにゃぁんっ」
助けてもらえると思っていたミリルは、予想外の言葉に、情けない声を上げました。
と、その時、玄関のドアを叩く音がしました。
「とりあえず、先にリビングに行ってて。ミリルちゃんなら心配ないから。…多分。
ココナ〜、お客さんの相手お願い〜」
「はいです〜♪」
ルティが呼ぶと、ココナは意気揚々と飛び出してきました。
「じゃあ、ミリルちゃんとモンスターさんはこっち」
そして、ルティの案内にしたがって、触手モンスターはミリルを運びつつ襲いつつ、2階のミリルの部屋に入っていきました。
「やあぁんっ、ダメだってば〜」
…ミリルの事が気がかりになったシアは、それでも、ひとり、ミリルの部屋の前にやってきていました。
扉の向こうからは、いかにもなミリルの声が聞こえてきます。
少し扉を開けるのをためらったシアですが、せめて様子だけでも確かめようと、扉を少し開けて中の様子を覗きます。
中では、ミリルが触手モンスターに脱がされていて、今まさに最後の一枚であるパンツを脱がされたところでした。
触手がぽいっと投げ捨てたパンツが、扉の真近に落ちてきます。
あとで返してあげようと思って、シアは足の先でそのパンツを引き寄せて拾おうとしましたが、その足に、近くまで伸びていた触手が、にゅるんっ、と巻きつきました。
そして、部屋の中に引きずり込まれてしまいました。
「シアちゃん!?」
いきなりの来訪者に、ミリルは思わず、責められているとは思えないほど素っ頓狂な声を上げました。
「ミリルさん、今助けてあげます!」
こうなれば、といった感じにシアはそう言い、近くにあったほうきを取って、ふりまわして抵抗しましたが、足がすでに拘束されていたせいか、あっさりほうきは取り上げられてしまいました。
しかもその間にも、触手はするすると足に巻きつくように上がってきます。
困ったシアは助けを呼ぼうとしました。
でも、今シアに助けを呼ばれたら、この状況をシリルに見られてしまいます。
できるだけ、自分が襲われているところは、お姉ちゃんっ子なシリルには見せたくありませんでした。
ミリルは、シアだけでも助けようと、シアにからみつく触手をどかせようとしましたが、自分にからみつき責めたてる触手のせいで、思うように動けません。
けれど、そのとき。
「わかりました、私も我慢します!」
シリルに見られたくない、というミリルの心情を察したシアは、そう言ってミリルにしがみついてきました。
抵抗を止めたシアに、再びゆっくりと触手がからみつき、手際よく衣服を脱がせていきます…
シアは顔を真っ赤にして、それでも、ミリルにぴったりくっついたまま我慢しています。
ちょうどその頃、シアが戻ってこない事を不思議に思ったシャルロットが、席を立って様子を覗きにきていました。
扉の隙間から中を覘き見たシャルロットは、いつの間にかシアまで触手モンスターに襲われているのを見て、これは一大事とフィリスを呼びに行きました。
「ねえねえ、フィリス姉〜、あっちで面白い事してるよ〜」
…ミリルは触手に襲われながら、ふと、扉の隙間からシャルロットとフィリスがにやにやしながら覗いているのに気づきました。
2人は完全にこの状況を面白がっているようで、助ける気はまったくなさそうでした。
「っの2人は…! …ふにゃぁんっ」
ミリルがつぶやいた言葉に反応して扉の方を見たシアは、扉の向こうから2人が覗いている事に気づくと、思わず大声を上げそうになりましたが、なんとか我慢します。
そして、シアは恥ずかしさに顔をそむけ、少し震えながら、さらに力を入れてミリルにしがみつきました。
…自分ならまだともかく、シアまでがこのまま触手モンスターに襲われてる姿を見られるのもなんだかかわいそうだったので、ミリルは思い切って、触手モンスターを2人にけしかけて巻き込む事にしました。
しかし、触手モンスターは森の権力者であるフィリスに睨まれると、触手をひっこめてしまいました。
なんとかひるまず、こっそりと進んでいた触手の何本かは、シャルロットのところまでたどり着きましたが…
むにゅ。
シャルロットは迷わずその触手を踏みつけました。
触手はしばらくじたばたしていましたが、やがて諦めてひっこむと、ミリルとシアのところへ戻っていきました。
シャルロットとフィリスからはMPが取れないと思った触手モンスターは、すでに感じ始めているミリルから一気にMPを吸収しようと、さらに激しく触手を動かしはじめました。
「や、やだ…っ、そんなにしちゃ…ふにゃあぁんっ」
ミリルは、いきなり増した快感に、思わず切ない声を上げてしまいました。
それはでもまだほんの始まりで、ミリルを責める触手は、その激しさをさらに増してゆきました。
「ふにゃぁぁ…んっ、やぁぁっ…あぅっ…」
短いような長いような責めが続いて、ミリルのアソコは、そこからあふれ出た液ですっかり濡れてしまっていました。
触手モンスターは、そんなミリルのアソコを、2本の触手を使って押し拡げます。
「にゃ…ダメ……それはダメ……っ!」
何をされるかわかったミリルは思わず声を上げましたが、触手モンスターはためらうことなく、ミリルのアソコに触手の先端をあてがいました。
そして次の瞬間、
「ふぁ…ふっ、ふにゃぁぁぁぁんっ!」
ミリルの中に、先にいぼいぼのついた触手が侵入しました。
同時にミリルのアソコは敏感に反応し、きゅっと触手を締め付けました。
そんな中を触手はくねくねと曲がりくねりながら、奥のほうへと潜りこんでいきます。
ミリルは自分の体の中を触手が蠢くのを感じながら、頭がおかしくなりそうな快楽に堕ちていきました。
そしてその先にあるのは、理性に勝った快楽だけ。
「あぅ…ふにゅっ…、いやぁぁん…っ…」
ミリルは、触手とつながっている場所から生まれてくる抑えようのない快感に、熱く切ない声と吐息をもらすばかりです。
一方、そんな様子を不安げに見守っていたシアは、ふと自分に絡み付いている触手が弛んでいる事に気が付きました。
だけど、心優しいシアには、自分だけ助かってミリルを見捨てる事は出来ません。
「お願いモンスターさん、私のMPも‥‥」
ミリルにぎゅっとしがみつきながら、シアはそうつぶやきました。
すると、ふたたび触手がするすると絡み付いてきました。
さっきまではまだ、ほとんどどこも触られていなかったようなシアでしたが、今度は、ぬるぬるした催淫性の分泌液を塗り広げるように、体中を触手が這い始めます…
「んん…、ミ、ミリルさん……」
少しずつ、シアにも快楽が湧き起こってきました。
しばらくして、触手モンスターはそろそろ充分なMPを吸収したので、最後に2人を気持ち良くいかせてやろうとしました。
蠢き責めたてる触手が、さらにその激しさを増していきます。
しかしその時、1階からココナの声がしました。
「うに〜〜っ、シリルちゃんがそっち行っちゃうです〜〜!!」
ミリルとシアは、遠くにその声を聞いていました。
けれども、その事態を認識できたのはシアだけでした。
ミリルは、挿入された触手をより激しく動かされて、気の狂いそうな快楽に溺れていたのです。
…シアは迷いました。
触手モンスターが自分たちをいかせてやろうとしているのは、わかります。
そして、すでに快楽の中にいるミリルが上り詰めるのは時間の問題です。
でも、シアはやっと、自分の中に気持ちよさが芽生え始めたばかりです。
このままでは、2人がいって開放される前に、シリルが来てしまいかねません。
シアはいちかばちか、ミウの作った薬をポケットから取り出すと、全員にぶちまけました。
ミリルが2階に上がったままリビングに戻ってこない事を不審に思ったシリルは、渾身の力でミリルの部屋に押し入ろうとしていました。
「ああ、ダメダメ、シリル、押すな、うわぁっ」
ばたんっ!
部扉が開けられ、シリルとシャルロット、フィリスが転がるように部屋に入ってきました。
しかし、そこには誰もいませんでした。窓が開けられ、何事もなかったかのようにカーテンがはためいています。
「みーちゃん…?」
不思議そうにシリルはあたりを見回します。けれど、やっぱり誰もいません。
「え〜っと、だからほら、シアと一緒に夕食の買い物にでも行ったのかな? すぐに帰ってくるよ」
フィリスはシリルの耳をふさぎつつ、皆のいる部屋へ連れ戻しました。
「ふみゃぁ…みみくすぐったい、触らないで…」
「まあ、少しだけ我慢してくれ」
そして…その少し後。
ミリルの部屋で、ミリルとシアは、一緒に絶頂の声を上げました。
結局、あの時2人がどうなったのかというと。
ミウの作った薬の力で、姿と声を完全に消し去っていたのです。
…しかしもちろん、常に失敗が付きまとうミウの薬が完全に成功しているはずはありません。
このあと、薬の副作用によってエッチな気分になったミリルとシアが、またもやシャルロットとフィリスの前でお互いを慰めあうハメになるのは、また別のお話なのでした。
おしまい。